ブラッディ・ラブ
いつもは考えないようなそんなことに細心の注意を払って、心の底から湧き出る罪悪感を押し込めて、彼女の首筋に歯を立てた。
「……っ!」
驚いたのか痛みからか、彼女の身体が震える。
「んん……っ」
微かに洩れる嗚咽。
……それは意外なほどに、甘い声だった。
しかしそんな彼女を気遣うより、口の中に流れ込んでくる、今まで味わったことがないくらいの甘く魅力的な血の味に驚く。
本当に、甘い。
もうこの味を知ってしまったら他の人間の血など飲めないと思うくらいに。
「…………」
彼女の血の味はいつまでも味わっていたいと思わせるほどに美味だったが、なんとか口を離す。
ぼんやりと天井を見つめていた彼女は、一度深く瞬きをして、俺を見つめ返した。
もう、彼女の瞳は涙を浮かべてはいなかった。
「……美味しかった?」
彼女の細い声に、頷く。
すると、彼女はふんわり微笑んで。
「よかった」
と柔らかい声でそう、言った。