ブラッディ・ラブ
「吸血鬼なんて、本当にいるんだね」
「……ああ」
「よかった、あなたが怖い人じゃなくて」
「……」
人間からしたら十分、怖いのではないだろうか。
血を奪っているのだから。
「無理やり、抱かれるのかと思ったから」
俺の思考を読んだように彼女はそう言った。
「あなたに血をあげるのは、怖くなかった」
「クレハ……」
「あたしの血でよかったら、もっとあげる。……死ぬほどお腹がすいているんでしょ?」
「……もう、限界だろう」
あまりの美味に耐えられず、かなり吸ってしまった自覚がある。
今は横になっているから分からないかもしれないが、貧血状態なはずだ。
「……そうなの?」
残念そうにそう言うと、彼女は「別にいいのに」と笑った。
その微笑みに。
心臓が、大きく音を立てた────。