手をつなごう
陽が遥か西に傾いた頃、少年達と別れた。
『また、一緒に野球やろうな』
懐かしい小指に約束を残して。
少年達と反対方向に歩き出した2人は、言葉無く傾く陽を眺めた。
「今日は、楽しかった。ありがとう。」
椿は、陽太のジャケットの裾を掴んで伝えた。
「これから、ご飯ですよ?!」
陽太の驚いた声に、椿は首を横に振る。
「もぅ、大丈夫。ちゃんと笑えるから。陽太に甘えちゃうから、今日は帰るね。でも、また遊ぼうね。」
引き留めるのは無理と判断した陽太は、しょうがないなぁ~と困った様に笑う。
バスに乗り込む椿を見送り、ひとつ溜め息を付くと、ジャケットのポケットから携帯を取り出し店に電話した。
「お早うございます。はい。今、椿さんと別れました。はい。大丈夫です。今から、店に向かいます。」
プツッ・・・
陽太は、携帯をジャケットのポケットに仕舞うと、店へ向かって駆け出した。