手をつなごう


テーブルに着いて新しい飲み物が運ばれてくるが、椿は一向に口を付ける気配は無い。


ただ、黙って下を向いていた。


「話があったんじゃないのか?」


圭一の声に、椿の肩がビクッと反応する。


カウンターからは、チラチラと陽太の視線を感じていた。


テーブルの上に、椿は真っ白な封筒を出し、それを圭一の方に進めた。


そっと離れた手の下に見えたのは、《日下 晴一・宮田 縁》と書いてある。


2人の結婚式の招待状だった。
もちろん、それは圭一の所にも届いていた。

やっぱり・・・話は、この事だったか・・・

椿から連絡があった時点で、何となく予想はしていた圭一だったが、どうやらそれだけではなさそうだ。


「行くのか・・・?」

圭一の問い掛けに、顔を上げた椿は、今にも泣き出しそうな困った顔をしている。


「行くのか・・・?」

圭一は、もう一度聞いた。


「けっ・・・圭一は・・・?」


「俺・・?俺は・・・」


「お待たせしましたっ!!モスコミュールです!!」


2人の間にあった空気を壊したのは、陽太だった。


うつ向く椿の死角から、圭一を睨み付ける。

どうやら、圭一に椿が泣かされていると勘違いして、起こした行動らしい。


案の定、カウンターに戻った陽太は河内に注意を受けていた。


お前は、番犬か・・・?!


圭一にとっては、そんな陽太の態度が微笑ましかった。


そして、気持ちに気付き不安に思う椿も・・・




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