トイレキッス
うどん屋を出たあと、仁さんと別れたあと、洋平は公園を散歩した。
陰鬱な気分に包まれていた。仁さんの淵上への言葉が、さっきからずっと胸の中に刺さったままになっていた。顔を前に向けることすら億劫で、うつむいたまま歩いてしまう。
自分が情けなかった。
洋平は、演劇部の部員達が笑っているのを見て、彼等は三田村の死をあまり悲しんでないのだと思っていた。
とんだ勘違いだった。
彼等は三田村の死を苦しみながら受け入れて、悲しみをのりこえていたのだ。だからああいうふうに笑うことができたのだ。
それにくらべて、自分はまだ三田村の死をぐずぐずとひきずっている。淵上と同じで、まだ一度も泣いていなかった。三田村が死んだことが信じられなくて、いや、信じたくなくて、浮かびそうになる涙を必死で無視していた。