トイレキッス


洋平は拳をにぎりしめた。全身の血が、ひいてゆくのを感じた。


「誰にやられたん?」


「藤沢先輩」


洋平は歯を喰いしばった。


見損なった。まさかそういうことをするひととは思わなかった。


即座に学校を早退して、藤沢の家へ行くことを決意した。


トイレから飛びだそうとすると、ミツキに腕をひっぱられた。


「麻見君、ちょっと待ってや」


「はなせ」


「誤解したらあかんで。喧嘩売ったんは、わたしのほうなんやから」


「何やそれ」洋平はふりかえった。「どういうことで」


「昨日の放課後、藤沢先輩に、決闘を申し込んだんよ」


「はあ?」


「それで条件をつけたんよ。負けたほうが、麻見君をあきらめるって」


洋平は絶句した。

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