トイレキッス


少女は缶コーヒーを素早く一口飲むと、ありがと、とつぶやいて洋平に返した。


「もっと飲んでもええよ」


洋平が言うと、少女は首を横にふった。


「やめとくわ。あんまり飲むと、本番中におなか壊すかもしれんけん」


「本番中?」


「そう、本番中・・・・・・」


急に少女は黙りこんだ。


そして突然大声をあげるて立ち上がり、洋平に飛びつくと、あわてた口調で聞いた。


「い、いま何時!?いま何時いま何時いま何時いま何時いま何時っ!?」


「な、何ぞ、いきなり?」


「ええから教えてや!いま何時っ!?」


洋平は腕時計を見た。


「十二時半」


少女は再びぺたんと座りこんだ。そして、ゆっくとため息をつく。


「間に合ったあ・・・・・・」
< 4 / 134 >

この作品をシェア

pagetop