トイレキッス


話を聞いても、洋平には何がなんだかさっぱりわからなかった。


「ほんまに何も知らんのやな?」


三田村が念を押す。


名前を言われただけで、普通そこまで早とちりするだろうか。
洋平はあきれながらうなずいた。


「ほうか。だったらなんで淵上はおまえのことを話とったんやろの」


「さあ」


洋平は昨晩の淵上との会話を回想した。三田村の部屋に窓から侵入してみろなんて言った覚えはまったくない。なぜ淵上はそんなことをしたのか。
三田村が首をかしげながらつぶやいた。


「しかし、淵上のやつ、おれを押したおして何するつもりやったんやろ?」


それを聞いて、洋平はまぬけな声をあげた。


思いだしたのだ。
そういえば、淵上に間違えて貸した、あのエッチな小説のあらすじは、確か主人公の部屋にヒロインが窓から侵入してきて、夜這いを仕掛ける、といった内容だった。


「まさかの」


頭に浮かんだ考えの、あまりのこっけいさに、洋平はひきつった笑みをもらした。


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