トイレキッス
洋平は、まばたきをした。
「まず、よけいな小道具が多すぎる。女の子の部屋だってことをあらわすために、かわいい置物を飾るんはええんやけど、この図案の置き方やと、役者が動きにくくなる。ちゃんと台本読んだん?それと、大道具のデザインが派手過ぎる。大道具はあくまでも背景なんやから、こんな役者より目立つ背景を作ったらいかん。あと」
藤沢は次々と欠点をあげていった。
遠慮のない口調だった。
しかも、どれも的確で、正しい意見だった。
なんでそこまで考えがいたらなかったのかと、洋平は自己嫌悪に襲われた。
最初はひとつひとつ丁寧に聞いていたが、あまりにもたくさんの欠点を指摘されるので、
洋平は気が重くなって床を見つめていた。
「描きなおして、と言いたいとこやけど、今回は日程に余裕がないけん。わたしが代わりに描いとくわ」口調をゆるめた。「ごめんね。せっかく描いてもらったのに、こんなこと言って。でも、こういうことは、ちゃんとしとかないかんけん」
洋平は、小さく、はい、と言ってうなずいた。