トイレキッス
翌日から、藤沢が描きおろしてきた図案をもとにして、ふたりは作業をはじめた。
女の子の服。サンタクロース十人分の衣装。女の子の部屋を型どる大道具、小道具。BGM、効果音のテープ。
これらのものを残り一ヶ月半の間に、たったふたりで用意しないといけない。
洋平の放課後は、一転して忙しくなった。
役者達にも手伝ってもらおうとしたが、彼等は揃いも揃って不器用だったため、材料の買い出しくらいにしか役に立たなかった。
女の子の服はミツキが私服を用意することになったが、サンタクロースの衣装は一から作らなければならない。
ふたりは毎日放課後、家庭科室を借りて、ミシンを動かしつづけた。
授業中にも机の下に隠しながら、手縫いでサンタクロースの帽子を作ったりした。
帰宅したあとも、藤沢と電話で相談しあいながら作業をつづけた。
洋平が入部する前は、藤沢ひとりでこのような作業をこなしていたのだ。洋平は藤沢に尊敬の念を抱いた。