トイレキッス


十二月にはいると、役者達は毎週日曜日に、幼稚園の講堂の舞台を使わせてもらって、そこで練習をするようになった。


洋平と藤沢は、舞台設備の確認をかねて、その様子を見物しに行った。


講堂では、役者達が休憩をとっていた。仲のいい者同士ばらばらになって、昼ごはんを食べている。


「わたしは音響設備をチェックしてくるけん、麻見君はこれで舞台の寸法計っといて」


藤沢は洋平に巻き尺をわたして、舞台裏のほうへ走っていった。
洋平は舞台の上にあがるとまわりを見まわした。役者の誰かに、巻き尺の端を持ってもらおうと思ったのだ。舞台といった大きなものの寸法は、ひとりでは計れない。そのとき後ろから声をかけられた。


「手伝おか?」


ふりむくと、ジャージ姿のミツキが立っていた。タオルを首にかけて、両手に水筒と台本を持っている。


「おう、頼むわ」


洋平は、照れをおさえながら、巻き尺の端をさしだした。


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