トイレキッス
第五話「打ち上げ」
日がすっかり沈んだ頃に、お好み焼き屋に着いた。
店内に入ると、複数のしゃがれた笑い声が聞こえてきた。土方風の男達が、カウンター席を埋めて酒を飲んでいた。かなり酔っているらしく、どの男も、濃く日焼けした顔を紅潮させていた。
店員のおばさんに案内されて、部員達は奥の座敷にあがった。
洋平は三田村といっしょに端の席に腰をおろした。三田村は、積んであった座布団を近くの部員達にくばりながら聞いた。
「麻見、おまえ川本の隣に座らんのか?」
ミツキはだいぶはなれた所に座っていた。
「そんなあからさまなこと。恥ずかしくてできませんよ」
「積極的のないやつやのう」
「三田村先輩こそ、淵上先輩の隣に行かんのですか?」
淵上は、ミツキの隣に座っていた。
「おれ達は人前ではべたべたせんことにしとるんよ」
「人前じゃないところではべたべたしてるんですか?」
座布団で頭をはたかれた。どうやら図星だったようだ。にやつきながら洋平はつづけた。
「うらやましいですね。ふたりきりになったら膝枕とかしてもらってるんですか?」
蹴られた。なんとこれも図星だったようだ。