トイレキッス
全員分のお好み焼きやジュース、その他の料理がテーブルにならべられると、打ち上げはさっそく始められた。
仁さんが、乾杯の音頭をとる。
「今日はお疲れさん。食うぞ。乾杯。あとついでにメリークリスマス」
仁さんがそう言うと、部員達も、乾杯、あとついでにメリークリスマス、と唱和してコップをかかげた。
座敷はいっきに騒がしくなった。
それぞれ気のあう者同士が集まって、飲食しながらはしゃぎあう。
洋平は三田村と、千円を賭けて、お好み焼き早食い勝負をした。
勝った。
三田村は、お好み焼きを喉につめたらしく、目を赤くしながら激しくむせて咳き込んだ。
「大丈夫っすか」
笑いながら、洋平は三田村の背中をさすった。
「おい、洋平」ふと腕時計を見ながら三田村は聞いた。「おまえ、いつ川本に告白するつもりなんぞ?」
「え?」
コップの中のコーラを飲みほして、三田村は洋平をにらんだ。
「おまえが演劇部にはいって、もう二ヶ月やで。そろそろいってもええ頃やろ」
「いや、でも」頭をかく。「やっぱり、まだ、だめです」
「よし、わかった」三田村は姿勢を正した。「おれが告白する機会を作っるわ」
「いいですよ。それくらい自分でやれますから」
「なあ、洋平」真剣な顔付きになる。「おまえ、ほんまに川本のことが好きなんやな?」
少し間を置いてから、洋平はしっかりとうなずいた。
「そりゃあ、好きですよ」
口に出すと、恥ずかしさがこみあげてきて、洋平はうつむいた。
「そうか。じゃあ後ろ向け」
「え?」
わけがわからずにふりむくと、体が固まった。