トイレキッス
とつぜん三田村が笑い声をあげた。
「すまんすまん。いや実はな、お好み焼き屋へ向かう途中に淵上と話しあっとったんよ。打ち上げが始まって三十分くらいたったら、まず淵上がこっそりと川本をおまえの後ろに連れてくる。そしたら、おれがおまえに川本への気持ちをさりげなくしゃべらせるってな」淵上にむかっと親指をたてる。「作戦成功やな」
淵上は無言でうなずいた。
何と言えばいいのかわからずに洋平が赤面していると、ミツキが目の前に正座して、こちらをまっすぐに見つめながら言った。
「もう、一回」
「はい?」
まばたきをする洋平。ミツキはゆっくりとくりかえした。
「さっき言ったこと。もう一回言ってや」
うわ、たまらん。
洋平は暴れだしたくなるのを必死でおさえた。まわりに誰もいなかったら、テーブルの上で、お好み焼きを蹴りとばしながら、はねまわっていただろう。それくらい高揚していた。
三田村がにやつきながら背中をたたいてきた。気がつくと、まわりの部員の何人かが、何事かといった顔でこちらを注目していた。その視線が、洋平をますます高揚させた。
なんかもうどうにでもなれという気分になって、洋平は絶叫した。
「おれは川本ミツキが大好きだ」