トイレキッス
部員達がおどろいて騒ぐのをやめた。
唐突な沈黙が、座敷を支配する。
自分に向けられた視線の数が倍になったのを感じて、洋平は身をちぢめた。
ミツキは言った。
「そっかそっか」
ミツキは洋平の隣に座ると、りんごジュースの瓶を持って、洋平のコップにジュースをそそいだ。そしてまた、そっかそっか、と言って笑った。
「おい、川本、返事は?」
三田村が聞くと、ミツキはきょとんとした。
「返事?そんなもん必要ないやろ?」ふたたび満面の笑みをうかべる。「わたしはいま、麻見君の告白を聞いて、にこにこしてるんよ。返事なんてしなくても、わたしの気持ちわかるやろ?」
洋平は思わずコップを落としそうになった。
「それは、その、あの、その」舌がうまくまわらない。「つまり、その、そういうことか?」
ちゃんとした言葉になっていないが、ミツキはしっかりとうなずいてみせた。
洋平は、胸の中にあった熱いものが、全身に広がってゆくのを感じた。