トイレキッス


そのとき、篝火の側に立っていた老婆が藤沢を呼んだ。藤沢はそちらに駆けていって、しばらく何かを話していた。なんだか話がはずんでいるようだった。


話が終わると、藤沢は洋平の前にもどってきた。


「除夜の鐘をついたあと、自治会のひと達と、集会所でお雑煮食べにいくんやけど、よかったら麻見君もいっしょにどう?」


「あ、すいません。おれ、神社に行くつもりなんで」


「川本さんの神社?」


にやつきながら、たずねられる。洋平は照れながらうなずいた。
藤沢は幼児みたいな声をあげた。


「いいなあ、いいなあ。わたしも恋人ほしいなあ」


「そのうちできますよ」


「だめよ。だって、わたし性格きついもん」すねた目になる。「わたしが川本さんを叱ったとき、麻見君、すごくいやな顔してたやろ?」


「はあ、まあ」


「男のひとって、わたしみたいなうるさい女よりも、川本さんみたいな甘え上手な娘のほうが、ぐっとくるものなんやろ?」


「いや、それはひとそれぞれやと思いますけど」


「でも麻見君はそうなんやろ?」


洋平は口ごもった。藤沢はだまってこちらを見つめた。



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