トイレキッス
第七話「三田村順次」
冬休みが終わり、三学期が始まった。
演劇部も、活動を開始する。
放課後、洋平が部室に行くと、三田村がにやつきながら話しかけてきた。
「よお、色男」
「なんですか、いきなり?」
「加火島は楽しかったか?」
「げ」洋平はあわてた。「なんで知ってるんですか?」
「川本から聞いたに決まっとろうが。もう、みんな知ってるぞ」
部室を見渡すと、他の部員達もにやつきながらこちらを見つめていた。
当のミツキはひょうひょうとした様子で雑誌を読んでいる。三田村が耳元でささやいた。
「あとでみっちりと結果報告してもらうけんな」
洋平は顔を赤くしてうつむいた。
部員が全員集まって、屋上へ行こうとしたとき、藤沢に呼び止められた。
「麻見君、わたし達は部室に残ろ」
「え?」
「裏方は何もせんけん、屋上にいても寒いだけやろ。部室でゆっくりしようや」
洋平は、寒風吹きすさむ窓の外を見てうなずいた。
「そうですね」
洋平は、藤沢といっしょに部室に残った。