接吻《修正中》
歩く足が止まる俺の顔を、不思議そうに覗き込む。


「寛久?」


俺を覗き込む目の前の女の顔より、俺の中に飛び込んでくるその姿・・・。

いつもより丁寧にされた化粧と、普段見せる事のない満面の笑顔・・・。

アンタは・・・。

忘れようとすると現れるんだな。


「寛久?ねえ、どうかした?」


俺は女の手首を強く握りしめ、駅へと走り出した。

何で、アイツが此処にいるんだよ・・・っ!

頭からその姿を消し去ろうと、俺は女の手を放す事なく走り続ける。


「・・・ねっ・・・待って・・・走れな・・・っ!」


スピードを落としたら駄目だって・・・。

振り返ったら後悔するって・・・。

自分自信に言いかける。

アイツを見付けても、俺は何もする事が出来なくて・・・ただただ逃げるしか出来ない。


「・・・寛久ってば!」


グッとおもいっきり手を引かれ、俺は息が乱れる女に目を向けた。
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