接吻《修正中》
折れた中指
お袋は看護師、親父は長距離トラックの運転手。

そんな不規則な生活を送る奴らの元に、俺は生まれた。

きっと俺じゃない誰かが生まれていても、きっと今の俺みたいになっていただろう。

親父は一度仕事に出ると数日帰って来ない日が多く、お袋は夜勤で朝迄いない事も多い。

だから、俺は小さい頃から一人で留守番が多くて。

正直・・・寂しかった。

特に、雨の日は。

屋根を流れ、下に落ちる雫の音が怖かった。

でも、俺は待ってたんだ。

二人が帰って来るのを、ひとりで待ってた。

でも・・・。

いつからだろう?

俺は、二人の帰りを待つのをやめた。

毎日毎日、居場所を捜すように外に出た。


「・・・寛久、お母さん出掛けて来るから・・・。晩御飯は温めて食べてね」

「・・・ああ・・・」


そうしなきゃ、俺はこうやって。

コイツと、顔を合わせなければならないから―・・・。
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