接吻《修正中》
悪あがき
「寛久、おめでとう」


それから俺は必死で勉強をした。

希望の大学に受かるために。

この家を、出るために・・・。

あの大学に行きたいって訳じゃなくて、ただ一人暮らしを理由にこの家を出たくて。

そんなに名の知れた大学ではないが、この家から出れれば何処でもよかった・・・。


「寛久も大学生かー、早いな」


今日は久しぶりに親父とお袋と俺でテーブルを囲む。

もう、二度とないだろう家族団欒を無理矢理笑顔を見せて過ごしてやる。

これが嘘の笑顔だと知らない親父は、満面の笑みを俺とお袋に見せる・・・。

なあ、お袋・・・。

あんたは今、何を考えて笑ってんだ?

ちゃんと指輪を薬指にはめて、いつもの染みのついたエプロンをつけて・・・。

何を考えて、俺にオメデトウなんて言う?
< 30 / 115 >

この作品をシェア

pagetop