接吻《修正中》
奈々が見ている世界を、俺も見てみたいと思った。

お袋も、親父もいない世界を見てみたい・・・。


「寛久、お腹空いた・・・」

「はあ!?・・・お前はいつもいつも腹減ったしか言わないのな!」

「ち、違うよ!」


消してしまいたい思い出は、いつになっても消える事がない・・・。

どうでもいい思い出は簡単に消えていくのに、消したい物は中々消えなくて。

深く深く刻まれる。


「違わねーだろ。頭ん中は食い物ばっかじゃねーか」

「・・・うぅ・・・っ」


奈々が口をアヒルみたいに尖らせるから、俺はムギュっとその唇を摘んだ。


「ふぐぐぐぐーっ!」


身体全体で抵抗する奈々が面白くて、小学生みたいだがいじめたくなる。


「バーカ」

「く、口とれるかと・・・」


半泣きの奈々の頭をグシャグシャに撫で、俺と奈々は会計を済ませて店を出た。
< 64 / 115 >

この作品をシェア

pagetop