接吻《修正中》
記憶のカケラ
幼い頃に手にしたキラキラ輝く透明なビー玉。

赤や青の模様が綺麗で、見てるだけで飽きなかった。

あの日。

その大好きなビー玉をギュッと握りしめたまま、俺は家を飛び出した。

訳が解らないまま、気付いたらお袋の後を必死で追い掛けた。

チビな俺の足じゃ追いつけないって解っていたけど・・・。

俺は、ただ追い掛けるしかなかった・・・。

何回も転んで、手に握りしめていた数個のビー玉は、いつの間にか一つしか残ってなかった。

お袋が飛び出した理由を、幼い俺は解らない。

でも、数分前に親父と言い争う声が聞こえたから、きっと喧嘩したんだって思った・・・。

だから。

だから俺が・・・。

俺が味方になってやらないとって思ったのに・・・。






追い掛けて追い掛けて。

たどり着いた先に待っていた光景は、知らない男の胸に顔を埋める。

お袋の姿だった―・・・。
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