接吻《修正中》
「・・・お前が来たから、少しはマシになるかと思ったんだけどな・・・」


どうせチャ太郎は犬だから、俺が何を言おうと返事をしないし。

ケイベツして、離れてなんかいかない・・・。

奈々の頭を撫でるみたいにワシャワシャ撫でてやると、チャ太郎は嬉しそうに尻尾を振る。

・・・奈々が犬に似てるのか、犬が奈々に似てるのか・・・。


「・・・お前はいいな。最初から、家族がいない・・・」


一番近い存在の家族を信じられなくて、他人を信じられる訳がない。

だから朔や奈々にも弱い部分を見せられない。

俺は、俺でいなければいけないんだ・・・。

枕元の携帯で時間を確かめ、ソロリソロリとベッドから起き上がる。

冷えた空気の中、冷たい床に爪先を付けた。


「そろそろ、雨も降らなくなるな・・・」


雨が雪に変わる季節が近いから―・・・。
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