接吻《修正中》
「よくないわよ、名前あるんでしょ?」


奈々が選んだシンプルな黒い首輪が、キラキラ光る。


「・・・チャ、チャ太郎・・・」

「チャ太郎ね・・・。可愛い名前じゃない・・・」


番犬には向かないが、チャ太郎が居てよかった。

もし二人だったら何も会話がないまま、気まずいだけだっただろうし・・・。

コポコポと音を立て始めるヤカンと、チャ太郎の甘えるような鳴き声だけが聞こえる。

何しに来たんだろうか?

大学に入ってから一度も連絡を寄越さなかったのに・・・。

久しぶりのお袋の顔は、懐かしいという言葉しか出てこない。


「・・・寛久・・・お父さんが寂しがってるわよ・・・」


チャ太郎の頭を優しい手つきで撫でながら。

お袋は、またか細い声で言う・・・。
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