接吻《修正中》
親父・・・。

親父の受話器から聞こえる声から、俺だって察しがついた。

親父が何を思ってんのか、少しだが理解できた・・・。


「・・・あんたが・・・親父に寂しい思いをさせてんじゃないのかよ・・・」


湯気が立ち始めるヤカンを見つめ、俺はいつもより力の篭る声で言った。

力を込めた訳じゃないのに。

なんでか腹立たしくて・・・。

憎らしくて・・・。


「・・・寛久、お母さんね・・・」


ヤカンの中の水が沸騰し、高い音を響かせる。

俺がカチッと焜炉の火を止めると、ゆっくりとその音は消えていった。


「あのね・・・お母さん、仕事辞めたの・・・。今は近くのスーパーで昼間だけ働いてる・・・」

「・・・何言って・・・っ!?」

「・・・ごめんなさい・・・寛久」


俺に背中を向けたまま謝りだすお袋を、俺は目を丸くして見つめた。
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