接吻《修正中》
「おかえり」も「ただいま」も、もういらねえ。

今更、そんな言葉が欲しいなんて思うような餓鬼じゃねえんだ・・・。


「・・・せめて、お正月くらいは帰ってきて・・・?お父さんに、顔だけでも見せてあげて?」


まるでお袋の気持ちを悟るように、チャ太郎はお袋の手に顔を擦り寄せた。


「・・・この子も、お父さんに紹介しなくちゃだから・・・」


会いたくない。

戻りたくない。

帰りたくない。

そう思って実家を飛び出して此処に来たから、今更解りましたなんて言える訳がない。

長年積もった思いを、今日を境に消す事なんて出来る訳がない。


「・・・チャ太郎、可愛いわね・・・」

「捨てられてるのを、拾った」


まるで自分の姿と被るコイツを、そのままになんか出来ねえよ。

・・・それに。


「そう・・・」


それにきっと、奈々はコイツを離さなかっただろうから。
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