接吻《修正中》
******


それからお袋は、親父が帰ってくるからと帰って行った。

家族に戻りたくなったから、仕事まで辞めて。

・・・今更、何を言い出すんだ。

普通の家族になりたいって、俺が何度願ったと思ってんだよ。

俺が家族を必要としてる時に、親父もお袋もいなかったんじゃねーか。

キューンキューンと鳴きながら俺に近付くチャ太郎を、いつもより強く抱きしめた。

何が嬉しいのか、小さな尻尾を横に振る。


「・・・お前はあの日、奈々が現れなかったらどうしてた?・・・今頃、此処にはいないだろうな・・・?」


奈々。

もしお前に出会わなかったら、俺はどうすればよかったんだろうな?

一生あのまま、暗い闇の底んを歩き続けなければいけなかったんだろうか?
< 92 / 115 >

この作品をシェア

pagetop