朱雨に鉛
「(キールったら……。それより、あの子大丈夫かしら?)」
そう視線を向けるキャサリンの先には一人の子供。
推定14歳にも見えるその子は、土砂降りにも関わらず傘をささないまま空を見上げている。
(や、ダイジョーブじゃねえだろ。あいつ頭イカレてんぜ?)
「(そういう意味じゃないわよ………。あの子、傘さしてないもの。風邪引かないのかな?)」
(はぁあ?知るかよ!
つーかキャシー、お前もいい加減その甘ちゃんな考えをどうにかしろ!この不衛生・悪治安の街で他人の心配なんざ、馬鹿か?!お前馬鹿なのか?!)
「(ううっ、そんなこと言わないでよう……酷いわキール)」
(ばっ、泣くな!泣くなよ、おい!)
相変わらず泣き虫なキャサリンに手を焼くキール。
しかしすぐに顔を上げ「あの子が濡れちゃうわっ」と言って案外早く立ち直るキャサリンに、キールはなんだか複雑な気分となった。