エンドロール
第三章
帰還と思惑
「ほぅ。それで逃げ帰ってきたというわけか。」
ボスの顔がまともに見れない。
あの要塞孤児院を抜け出して、無事事務所に帰還。
そして、そこには予想通り般若と化した社長が待ち構えていた。
「お前が大人しくしているとは端から思っていなかったが、
トシ、お前もか。」
かの有名なシェイクスピアのジュリアス・シーザーに出てくるブルータスお前もか!!という名台詞がなぜか頭によぎった。
「聞いているのか。」
「聞いているわよ。」
ボスがお怒りなのになんとも別のことを考えるなんて能天気なと冷静なもう一人の自分が呆れている。
”ボス、勝手なことしてすいやせん!!”
「で、お前はなぜまだそこにいる。」
抜け出した後もトシと連絡を取れるようインカムの回線を外からでも繋がるようにした。
そのインカムから社長とトシを繋げている。
"ボス、悪いんすけどそこら辺の事情は美紅から聞いてください。
今、オレちょっと忙しいんであとでまた連絡します。"
切迫している状況なのか単に社長の雷が怖いのか一方的にプツリと回線が切れた。
その音が私には社長の血管が切れた音のようにも聞こえて、まともに社長の顔を見れずにいる。