ただ、恋をした
3
彼は、その日から大学にこなくなった
ヤバい人達のグループに入ったと風の噂で聞いた
もう、あの頃の優しい秀君は見られないのだろうか
ある日だった
「麻衣、ちゃん」
橘先輩、だった
「先輩……お久しぶりです」
「久しぶり…元気だった?」
「はい、あの……どうしてか、聞いてもいいですか?私…信じられなくて……」
「うん…じゃあどっか、座れるとこ入ろうか」
たどり着いたのは、あの喫茶店
「ダージリンお願いします」
「私コーヒーで」
「……私ね、親の都合で結婚することになったんだよね…けど…やっぱりまだ、忘れられなくて………あんなひどいこと言っちゃってもう戻れないだろうけど…もう一度、はなしてこようと思うんだ」
心臓をうたれるようだった
なんだ、相思相愛なんだ
どうしようもなく悲しくて
どうしようもなく虚しかった
秀君のことがまだ好きだったなんて、知らない
秀君は、もう私がほんとに必要なくなるんだ
幸せを願ったのに、どうして今私はこんなにも憎いんだろう
それが、一番秀君が幸せになる方法なのに
どうして、やめて、なんて思ってしまったんだろうか
自分だけが、世界で醜くて汚い
「秀く…五十嵐先輩は、今も橘先輩の事好きだって言ってました、だから、大丈夫です…幸せになってください」
「うん…ほんとにありがとう…麻衣ちゃん……」
これでいいんだ
「頑張って下さい、先輩」
「ありがと、麻衣ちゃん」
橘先輩とは、そこで別れた