塩辛い酒よりも、甘ったるいだけの酒が飲みたい。
喉をとおる酒は、いつもならなんてことないのに。
嫌というほどヒリヒリする。
「ああー、月が綺麗だなあ。やあーっぱこんな時に酒は飲むもんさねえ」
こくりと、新しく入手してきた『鬼桃天酒』(きとうてんしゅ)を口に含み、ころころと舌の上で味わう。
すると、ふっと影が重なった。
「まあーた飲んどるんかいな、阿呆。やけ酒もええ加減にしときい」
「師匠」
つい1ヶ月程前、妖怪のでる森にておいら達は出会い、師弟関係を結んだ。
師匠の名は【鶴嫁怪】(つるかけ)。
お琴ねえさんには【鶴】と呼ばれている。