愛と正義と敵と【未完】
その言葉を聞いた紗江は途端に切なくなりました。
「わかりましたわ、お姉さま……」
苦々しくも表情を崩さないように気をつかっている紗江にニコリと微笑んだ琶歌は、ゆっくりと立ち上がってこの部屋を出ていった。
スっと音を立てるわけもなく。
琶歌の後ろ姿を見送った紗江の顔はいつまでも晴れることはなかった。
「今日もまた、都に行かれるのですね……」
都にはもっと芸に奏でた人がいるとお姉さまは言っていた。
でもそれは、セイさんのことを指していらっしゃるのでしょう?
九つながらにも状況を理解している聡明な紗江は、琶歌に幸せが訪れることを、夕暮れの空を彩る街並みに心から祈りました。