魔界女王伝
「いや、あれだな・・・やっぱり駄目だったよ。これ以上やめていくと頭が痛くなる」
「ふっ」とステーブが笑った。



 ジョンソンとステーブは、ロンドンにある日本の格闘支部、大東流合気道の大会を見て入門した仲間であった。六年間の修行の末、彼等二人は黒帯を取り、ある大会に出た時、この博物館の館長の目に留まり二人をスカウトして、二人共この仕事についた。



「ところで、ジョンソン。いいのか」



「ああ」とジョンソンは頭を掻く。
「仕方ねぇだろ、まさかダイアンが事故るとは思わなかったぜ。・・・確かに今日は娘の誕生日だったんだがな・・・まあ、プレゼントはもう買ってあるし、明日渡せばいいか。さて、とそろそろ巡回の時間だ」



 本当は3か月も前から、ジョンソンは子供の誕生日のため休暇を取っていたのだが、
本来今日、仕事の担当であるダイアンが挽き逃げに会い、入院する羽目になっていた。



幸い命に別状はないが、それでも全治三か月の入院生活を余儀なくされ、彼の親友だったジョンソンは自分から仕事をしたいと志願したのだった。



 当初、この事を聞いた妻のサリーは、その日、大喧嘩をしたが、夜中に起きてきた娘にケンカしているのを見られ、二人とも心から動揺していた。
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