「視えるんです」
本田先輩
………
……
…
数日後の、ある日の放課後。
私は、空き教室に来ていた。
雨宮さんと話したあと、私は時々、幽霊らしきモノを見るようになった。
全てが、『らしきモノ』だ。
視界の端に誰かが映るけど、そちらを見ると誰も居ない。
一人で居る時に視線を感じるけど、当然誰も居ない。
何か白っぽいモノが通りの向こうに見えたと思ったら、瞬きをした瞬間に消えている。
などなど……『幽霊』と呼ばれるモノなんだろうけど、あまりにもぼんやりしていて、本当にそうだったのかどうかがイマイチわからない。
「別に、ハッキリ視たいというわけじゃないんですけど……なんとなく、気になっちゃって」
先輩もこういう風に視えてるんですか? と、それを聞くためにここに来た。
先輩はいつも座ってるだろう椅子に腰掛けてペットボトルのお茶を口に運び、向かい側の椅子を見た。
そこに座っているのは……無表情の雨宮さん。
あぁ、そこは彼の指定席なんだ。 と、今日ようやくわかった。
そんなことを思ってる私に、本田先輩は言う。
「時々視界に入ってくる程度なら、あまり気にしなくていいよ。 いや、気にしちゃダメ。というのが正解かな。
気になってついつい目を凝らしたくなるだろうけど、相手と波長が合ってしまうと、ちょっと危険かな。
こちらが視えているように、相手にも視えているからね。 だからなるべく視ないように、目を合わせないようにする」
そう言いながら、先輩はしっかりと雨宮さんを見てる。
……バッチリ、目が合ってるけど……雨宮さんだから大丈夫。ということなんだろうか。
なんて思っていたら、雨宮さんが私を見た。
当然、目が合い……何故だか一瞬、背筋が寒くなる。
「それ、危険だよ」
「へっ……!?」
「雨宮じゃなかったら引き込まれてる」