「視えるんです」
視える人
空き教室の中は、外から見えたのとはずいぶん印象が違った。
外からは、机と椅子が山のように積み上がってるのしか見えなかったけど……隙間をぬって進めば、中はガランとしている。
目隠し用に、出入り口のそばだけ机や椅子が置いてあるみたい。
いい隠れ家だ。
「凄くいい場所ですね。 でも、机が倒れてきたら出口が塞がって大変そう……」
「絶壁の孤島とかじゃないから、大丈夫」
そんな風に言い、本田先輩は普段使っているだろう椅子に腰掛けた。
その向かい側にもう一つ椅子があったから、そこに座ろうとしたら……、
「そこは、ダメだよ」
……にっこりと笑いながら、そう言われてしまった。
「ここ、ダメなんですか?」
「うん。 死にたくなかったら、そこはやめておいた方がいいよ」
ゾクッ……。
死にたくなかったら、って……なんでそんな、恐いことを……。
それを問い質そうと本田先輩を見ると、本田先輩は椅子をジッと見ながら手を伸ばしてきた。
これって……手を握れってこと?
「こっちに来て」
「は、はい……」
その手にゆっくりと、自分の手を重ねる。
心臓はあり得ないくらいドキドキしてて、今にも破裂しちゃいそう……。
その時に、ハッキリとわかってしまった。
……私、本田先輩に恋してる。