「視えるんです」


や、っちゃった。

先輩と、キスしちゃった……。




「……悪い。 なんかちょっと、したくなった」




ようやく離れた先輩は、私に背を向けながら髪を掻く。

どうすればいいか、なんて声をかければいいか迷ってるような、そんな後ろ姿。




「キスは、ねぇよな……」




背中を向けた本田先輩の最初の一言が、それだ。

キスはねぇよな。
いきなりとか、ねぇよな。

そう続けてから、ゆっくりと振り返った。




「マジで悪かった。 謝って済むことじゃねぇけど……なんか、お詫びさせて欲しい」

「い、いえっ……私は、全然っ……」

「いや、気にしてないとしても、俺の気が済まないから」




真っ直ぐで、真剣で、迷いの無い瞳。

……格好良すぎます、先輩。


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