「視えるんです」




「志緒は、雨宮を大切に思っていたんだね」




医師が居なくなった個室で、私を見て微笑む翔先輩。



昨晩、教室で気を失っている翔先輩を見つけたのは、まだ学校に残っていた教師だった。

その後、階段の踊り場に居る私と半沢先生も発見され……救急車と警察が呼ばれたらしい。

警察が呼ばれた理由は、ズバリ『普通ではない状態』だったからだ。


教室でぐったりしてる翔先輩。
踊り場で涙を流しながら倒れていた私。

そしてスースー気持ちよさそうに眠る半沢先生。 その傍らには立派な警棒。


その奇妙な状態に、『何かあった』と感じたのだろう。

何があったかはわからない。 だけど何かがあった。
だからこそ警察が呼ばれ、現場検証し、目が覚めた私は質問攻めにされたのだ。


結局、誰も怪我はしていないし、検査の結果も問題なし。

奇妙な出来事。のまま、話は終了した。




……いまだ眠り続けている半沢先生は、目が覚めた時に警察からお咎めがあるっぽい。

警棒の所持は『軽犯罪法違反』にあたるとかあたらないとか。

目覚めたばかりでぼんやりしていたから、よくわからないけど……注意されることは間違いないという。


警棒を所持していた理由について、先生はどう話すんだろうか。
いや、警棒だけじゃなく、近くにはGSで使う道具が入った鞄もあったはずだ。

……大丈夫だろうか。

私のせいで、先生の立場が悪くなってしまうんじゃないか。

そう思いながら数時間を過ごしていたら、先輩が来た。という流れになる。



先輩は私よりも早く目覚めていたらしく、事情を聞かれるのも早く始まり、早く済んだ。

だから私のところに顔を出し、雨宮さんの話をした私に言ったのだ。

『大切に思っていたんだね』と。


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