「視えるんです」
「……恋、していたんだと思います」
先輩にこんなことを言うのは、自分でもどうかと思う。
だけど隠したままこの先を過ごしていくのは、どうにもイヤだった。
雨宮という人が居た。
その人に私は恋をした。
それは、事実なのだ。
「人が人を好きになる。 それは、当たり前のことだからね」
先輩は優しく笑い、私の髪を撫でる。
「好きなら好きで、いいんだよ」
「……二度と、会えないかもしれないのに……?」
「だからこそ、好きで居ればいい。
死んでしまった人を想うのは生きている人間の役目だよ。
雨宮がここに居なくても、志緒の心の中には居る。 俺の心の中にも居る。
今は会えないとしても、いつかは必ず会える。 雨宮がそう言ったんだろう?」
「……はい」
いつかまた会える。
雨宮さんの言葉を頭の中で何度も繰り返しながら、差し出された翔先輩の手を強く握り締めた。