「視えるんです」


………

……




その後、翔先輩は闇に取り込まれたあとのことを話してくれた。


鏡の女に引きずり込まれた、たくさんの霊たちの声。
人を憎むモノ、ただ泣き叫ぶモノ、助けを求めるモノ……たくさん居る中で、先輩は一人の女性に出会った。




「彼女の名前は『彩子』。俺たちが『鏡の女』と呼んでいた人だ。
……彼女は、闇の一番奥深くで泣いていた。『助けて』と」

「え……?」

「彼女も他の霊と同じように、被害者だったんだよ。
彼女よりも強い力のヤツに飲み込まれ、我を忘れ、動かされていた。
彼女はずっと成仏したがっていたけれど、ヤツがそれを許さなかったんだ。
以前話した、お払いの時……その時ヤツの力は弱まり、彩子は成仏しようとしたけれど。
最後の足掻き、火事場の馬鹿力とでもいうのかな。 ヤツは再び彩子に入り、そして雨宮を襲った。
これが真相だったんだ」




……じゃあ私は、鏡の女……彩子さんの中に居た別のモノに襲われたということ……?

彩子さんの体を使って、邪悪なモノが私を……。




「ヤツは憎しみの塊で、人の形はしていなかった。
だから体が欲しかったんだよ。 手始めに幽霊の体を、そして次は、生きた人間の体」

「……」

「志緒が狙われたのは、強い力を持っているのに隙だらけだったから。らしいよ」

「……え?」




強い、力……?




「先輩。私は、強い力なんて……」

「まず、霊が視えるということ自体、普通の人よりも強い。それはわかる?」

「あー……言われれば、そうかも……」

「志緒はね、ただ視えるというだけじゃなくて……もっともっと、出来る人間なんだよ」




微笑みながら、翔先輩は言う。

それこそ、先生に匹敵するくらいの強さなんだ。と。




「私が、先生に匹敵……!?」

「と、彼女は言っていた。 俺にはよくわからなかったけど、霊が言うんだからそうなんだと思う」




先生に匹敵する強さ。

それって、先輩よりも強い力を持っているってこと……?

この、私が……!?


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