「視えるんです」
「……怖がりなのに、凄い力ですか……?」
……自分のことだけど、正直信じられない。
力を持つ人はみんな、先輩や先生、そして雨宮さんみたいに、幽霊を前にしても落ち着き払ってるもんだと思ってた。
……私は、視えないモノをとことん怖がり、視えるようになったあとも、ひたすら怖がり……だった。
そんな私が『凄い力』を持っているなんて、到底思えなかった。
「志緒がどの程度の力を持っているかは、俺にはわからない。
いや、判別するすべが無くなった。と言うべきだな」
「え?」
自分の掌を見つめ、拳を作る。
それをもう一度開いた時、先輩は静かに言った。
「俺にはもう、視えないんだ」