「視えるんです」


視え、ない。

幽霊が、もう視えない……?




「先生が闇を斬り、雨宮が俺を引き上げてくれた時……雨宮は言った。『荷物は置いていけ』と。
その時は何を意味していたのかわからなかったけど、目が覚めた後に気付いた。
俺はもう視えない。 じいちゃんが死ぬ前の、ごく普通の人間という感覚に、戻っていたんだ」

「……闇の中に、先輩の力を……」

「うん」




どこか寂しそうな顔で笑い、そのあとに小さく息を吐く。




「雨宮は、俺に言ったんだ」




ーー『社長の子は社長、政治家の子は政治家。お前は本田家に生まれた、だから視えるんだ。
呪いとかそういうのじゃない。これはもう、決まっているコトだ』


ーー『だが、それを変えることは決して不可能じゃない。
自分の人生というのは、自分だけのものだ。
お前はお前の人生を生きろ。
俺が俺の人生を、生きたように』




……それが、先輩が聞いた、雨宮さんの最後の声だったという。


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