「視えるんです」
「……呪いじゃない。 雨宮がそう言ってくれて、嬉しかった」
呪われた家じゃない。それを知ることが出来たから、嬉しかった。
先輩はそう言い、また微笑んだ。
「親父はまだ視えるみたいだけど、以前よりもかなりぼんやりとしてきたって言ってた。
だから多分、親父の力もずいぶん弱まったんだと思う。
雨宮が荷物を置いてきてくれた。 だから俺は救われたんだ。
いや、俺だけじゃなくて、俺の家が救われた」
「……はい」
翔先輩も、翔先輩のお父さんもおじいさんも、視たくて視ていたわけじゃない。
そう決まっているとわかっていても、きっと誰も望んではいなかった。
その力が消えたのは、紛れもなく雨宮さんのおかげだ。
だから先輩は微笑む。
嬉しそうに。そしてどこか、寂しそうな顔で。
「雨宮にお礼を言うことが出来なかった。それだけが、心残りだ」