「視えるんです」
……先輩もまた、雨宮さんを想っている。
想っているけれど、もう二度と会えない。 視ることが、出来ない……。
「本田の気持ちも南沢の気持ちも、雨宮は全部ちゃんとわかってるよ」
「半沢先生っ……!!」
車椅子に乗り、点滴を打ちながら菓子パンを食べる半沢先生。
点滴打ちながら菓子パンって……元気なのか元気じゃないのか、いまいちわからない状態だ。
「もう大丈夫なんですか?」
「おう。見ての通り、力が戻らなくてヘトヘトだ」
「え、元気そうなのに……」
「見た目と内面は違うんだよ。いくら栄養のあるもんを食っても、力がフルに戻るのは半年後だ」
半年……そんなにかかるんだ。
だから彩子さんに『不可能』と言ったんだ。
……それくらい強い力を持つモノが相手だったんだ。と、今更に知る。
「で、雨宮のことだが」
「あっ……はい」
「『上』からお前らをしっかり見守っているし、お前らの想いもちゃんと伝わっている。
『上』というのはそういう場所だ」
幸せなところだよ。と、先生は言う。
幸せ……そう、幸せなのだ。
天国と呼ばれるその場所に行って戻ってきた人は居ないけど。
でも、その場所で雨宮さんは幸せに生きている。
そしていつの日か、また会える……。
「『上』から心配されないよう、しっかりと生きる。 それが一番だよ」
「……はいっ!!」
先生の言葉に、私も翔先輩も笑顔を見せた。