「視えるんです」




「最高だな、この場所」




タバコをくわえた半沢先生が、僅かに微笑んだ。

それに頷いた翔先輩が、花を供える。




「雨宮は、家族にとても愛されていた。 そう思います」




綺麗に掃除され、雑草も生えていない。
亡くなってからずいぶん経つはずなのに、まるで新品のような墓石。

それを見て感じるのは、先輩が言った『愛』だ。

雨宮さんは愛されていた。 ううん、今でもずっと、愛されている。




「お。コイツ生きてりゃ俺と同い年か。 俺も雨宮のように、死んだあとも愛されたいもんだ」

「……先生って何歳なんでしたっけ」

「永遠の18歳」

「あ、そうですか……」




はぁ……と、ため息をついたあと、しみじみ思う。

そうか。
雨宮さんは、生きていれば先生と同い年なんだ。

……私が生まれる前に、亡くなったんだよね。

私が知っているのは、18歳の頃の雨宮さん。


もし生きていたら、どんな人になっていただろうか。




「……会ってみたかったな。 生きてる、雨宮さんに」

「南沢。 俺が二人居ると思えばいいんじゃないか?
ちょうど同い年だし」

「……それは却下で。 先生が二人って、考えるだけで疲れます」




一瞬想像しちゃった自分がイヤだ……。

うぅ、ニヤニヤ笑う先生が二人……背筋が寒くなる……。


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