「視えるんです」




「……せめて、手を合わせていけばいいのに」




じゃなきゃ来た意味が無いような気がする。

と、思ったけれど、隣に居た翔先輩が小さく笑った。




「案外、『饅頭は嫌い』ってのがホンモノだったのかもしれないよ」

「えー……?」

「声に出さなかっただけで、先生はもう雨宮との話を終えていたのかも」




……そうかなぁ。

先生は、ただ単に饅頭が目当てだった気がするけど……。

……でもまぁ、視えなくなってしまった私には、もう真実はわからないけどね。




「……雨宮さんだけが視えればいいのになぁ」

「確かに」




そんな風に言って、先輩と二人で笑い合う。


その後、私たちは雨宮さんのお墓に手を合わせた。

どこかで、聞いていてくれることを願って。


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