「視えるんです」
先輩と私の関係
踏み込んではいけない域に 踏み込んでしまったのかもしれない。
と言ってみたものの、あれ以来、奇妙な体験をすることはなく。
高校生活に慣れてきた私は、友達も出来、校内で迷うこともなくなり、至って平和な毎日を過ごしていた。
あの日以来、本田先輩にも会っていない。
同じ校内に居るはずなのに、意外と会わないものだ。
私が迷子になってしまった日は、当然のように現れたのに。
なのに今は、全く会わない。
いや……先輩と後輩というのは、本来はこういうものなんだよね、きっと。
部活なり委員会なり、共通点が無ければ会って話すことなどないのだ。
だから多分、私と本田先輩もこのまま会わずに過ごしていくんだと思う。
それが、普通なのだ。
「おーい、南沢ぁ」
半沢先生にそう声をかけられたのは、音楽の授業が終わった直後だった。