「視えるんです」
「浮遊霊というのは、生きている人間に害を及ぼすことは少ない。 言葉の通り、浮遊してるだけだからね。
一方の、鏡の中の彼女は……さっきも話したけど、その場に居着いているモノ、いわゆる地縛霊というやつで。
その場所に縛られていて、生きている人間に悪い影響を及ぼすことが多い。 生きている人間を恨み、妬み、同じ世界へと引きずり込もうとしているんだ」
ゾクッ……。
だから私はあの時、首を……ーー。
と、それを思い返した時、首のあたりが妙に冷たく、苦しくなった気がした。
圧迫されている。というのだろうか。
息は出来るけど、何故か苦しい。 苦しいのに、喉のあたりには何もない。 なんとも妙な気分だ。
「地縛霊の部類だった彼女だけど、一度は成仏しかけた。 でもそこに現れたのが、あの浮遊霊……雨宮だった。
学校は違うけど、雨宮もまた自殺した高校生で、あちこちの学校を行ったり来たりしてるんだ。
生きてるものを羨ましく思うこともあるけれど、彼女ほど強く妬んだりはしていない。
なんていうのかな……雨宮は、ただ傍観してるんだ。 人間の生き様を、そして霊たちの行く末を。
危害は加えないし、イタズラすることもない。 物静かな奴だけど……彼女の行く末を見ていた時、雨宮は、彼女に引きずり込まれた」