「視えるんです」
私から手を離し、椅子に深く座って深く深く息を吐く。
それから天井の一点を見つめ……ゆっくりと目を閉じた。
先輩が見ていたその場所に、何かが居るんじゃないか。
そう思ったし、恐怖も沸き上がってきたけれど。
落ち着こう。 先輩にそう言われていたから、なんとか自分を落ち着かせながら、先輩を見つめた。
「……地縛霊を成仏させるのは、簡単なことではないんだ。
だって、人を引きずり込むほどのパワーがあるわけだろう? 成仏させようとこちらが動いても、あっちは動かない。
下手すれば、こちらがやられる。 そういうものなんだ」
独り言のように言う本田先輩は、携帯に視線を落とす。
その画面には、多分まだ、あの写真が表示されているだろう。
浮遊霊……先輩が『あめみや』と呼んだ、あの『目』が写った写真。
それを見つめながら、静かに言葉を続けていく。
「雨宮は今、俺のそばに居る。 彼は、鏡の支配から抜け出したから」