「視えるんです」
視えるんです。
授業終了のチャイムが鳴ったばかりだから、通学路はまだ人が居ない。
普通はこのあとホームルームや掃除などがあるけど、今日の私は特別だから、それに参加する必要がなく、とても楽ちんだ。
……特別になった理由は、思い出したくもないけどね。
「……俺の家、ってさ」
ふと、先輩が口を開いた。
言おうかどうか迷いながらも言う。 そんな感じで私を見る。
「……俺の家は、代々視えるらしいんだ。 それも、決まって男だけ」
「そう、なんですか……?」
「うん。 親父もじいちゃんも、そのまたじいちゃんも、ずっと色々なモノを視てきたらしい。
歳を重ねるごとに、ぼんやりとはしてくるみたいなんだけどね」
そのままゆっくりと、先輩は言葉を繋げていく。
「初めて視たのは中1の夏。 じいちゃんが死んだ日だった。
親父も、じいちゃんが死んだ時……あぁ、俺からすれば曾祖父ね。 その人が死んだ時に、初めて視たらしい。
じいちゃんも同じで、じいちゃんのじいちゃんが死んだ時が初めてだったって言ってた。
俺んちはそういう家らしい。 だから親父が死んだ時……俺に息子が居たら、同じモノを経験すると思う」
「……」
「ちなみに。 俺の家はずっと男しか生まれてない。
だから必ず、じいちゃんが死んだ時は孫が視る。 そういう決まりなんだ。
誰が決めたのかは、わかんないけどね」