「視えるんです」
覚悟。
だから先輩は、私に『怖くはない』と言ったのかな。
全てを受け入れ、覚悟を決めたから……だから、怖くはない。 そういう意味だったのかな。
「……ごめん、こんな話、聞きたくなかったよね」
「……いえ。 先輩のことが知れて、よかったです」
「よかった、か。 この話を聞いた大抵の人間は、俺から離れていくんだけどな」
「え?」
「だって、呪われた家だよ? 巻き添えを食わないという保証は、無いんだ。
キミだって、もう既に危険な目に遭ってるじゃないか」
……危険な、目。
確かにそうだ。 私はもう、踏み込んではいけない域に踏み込んでしまった。
でもそれは先輩のせいでも、先輩の家のせいでもない。
私は、弱い人間だから……だからこそ、その弱さにつけ込まれたんじゃないか。と、思う。
弱い部分をさらけ出し、一人になったのは私。
そこをあの女は、見逃さなかった。
だからこれは、私自身のせいなんだと思う。
「……先輩が居たからこそ、私は助かったんだと思います。
確かに、先輩と会ったあと、不思議なことが起こりましたけど……でもそれは、『いつかは起こるものだった』んだと思います。
幽霊が怖くて、泣いてばかりいる私……そういった弱い部分につけ込まれるのは、時間の問題だったんじゃないかな、と。
だから、先輩が居てくれたおかげで、私は救われたんです。
引きずり込まれそうになった私を助けてくれたのは、本田先輩ですよ?」
巻き添えを食うとか食わないとか、そういうのは関係ない。
私は本田先輩に救われた。 それが真実だ。